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   3.レギュレーションに則ったEC04のエイジング加工による性能向上について

-CONTENTS-

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1.目的と原則について

2.2ストローク小排気量エンジンの仕組み

3.レギュレーションに則ったEC04のエイジング加工による性能向上について

4.EC04エンジンのリードバルブと混合気の吹き返しよる限界について

5.EC04のキャブレター・セッティングについて

6.EC04系エンジンのCDIと点火の調整について

7.EC04系エンジンのこれまでの形式と部品、構造の違い

8.オイル添加剤等とエンジンオイルについて

 ずっと言われているように、EC04エンジンは、新品状態では回らないけれども、特に手を入れなくても、使い込むに従って同じキャブレターセッティングで使用オイルやオイルとガソリンの混合比を変えなくても、最高回転数は上がってゆきます。この原因は、以下の点にあると考えられます。

3-1.クランクシャフトとクランクシャフトベアリングのクリアランスが小さすぎるための回転抵抗

 EC04のクランクシャフトベアリングは、規格品の安価なものが使われていて、クランクシャフトもそれに合わせて径が設計されていますが、クランクシャフトベアリングとクランクシャフトのクリアランスがほとんど無く、そのため、新品エンジンのほとんど場合、クランクケースからクランクシャフトを抜くためにプーラーのような工具を使って行う必要があります。また、クランクシャフトベアリングの精度の問題もあり、このクリアランスが必ずしも一定ではないようです。中には、工具を使わなくてもクランクシャフトが外せる場合もあります。そのため、多くの場合、クランクシャフトベアリングが圧力を受け、かなり大きいフリクションロスを発生しています。
 この部分は、エンジンを使用するに従って、クランクシャフトとクランクシャフトベアリングの内面、クランクシャフトベアリングのボール部分が摩滅してゆきますので少しずつフリクションロスが少なくなってきます。また、よく回るエンジンというのは、工作精度の問題で、最初からこの部分のクリアランスが大きく、摩滅も早く進むからと考えることもできます。

 一般的なエンジンレギュレーションでは、一切の切削加工は禁止されていますが、クランクシャフトとクランクシャフトベアリング内面は常に接触していて、使用するに従って摩耗してゆきます。このことから、意図的に、クランクシャフトベアリングの内面を均一に研磨して若干のクリアランスを与えてフリクションロスを減らしたとしても、レギュレーションには抵触しないと考えることができます。また、常に摩滅する部分ですので、車検で、加工を判断することも不可能です。これをエイジング加工と言いメンテナンスの一環として解釈できると思います。

 加工の目安としては、クランクシャフトがクランクケースに手で押して軽く挿入できる程度です。研磨しすぎるとこの部分にガタが生じて、エンジンに悪影響を及ぼします。少しずつ研磨して挿入の具合を確かめながら加工してください。
 また、従来、純正部品以外の高価で精度のよいクランクシャフトベアリングに交換したり、クランクシャフトの芯だしを行ったりということが行われていましたが、これらの効果も同様の理由によるものだと考えられます。クランクシャフトの芯だし加工は、レギュレーションには抵触しないものと考えられていて、振動低減の効果もあり、エンジンメンテナンスのセオリーとしては行ったほうが良いのは間違いありませんが、上記のエイジング加工のみでも、十分効果がありますので、あまりこだわらなくてもよいようです。
 同様に、オイルシール内面も、クランクシャフトと常に接触し摩滅してゆきますので、この部分も少しクリアランスをつけるとよいです。この部分はやりすぎると、クランクケース内の圧縮が漏れて良くないのですが、クランクケースリードバルブの仕組みの問題から、実際にはよほどでない限り、気にする必要はありません。

 KT100エンジンなどのレーシングエンジンの場合は、定期的なオーバーホールでクランクシャフトベアリングとオイルシールの交換を行いますが、上記の点からはEC04エンジンの場合、これらをすり減らした状態にすることが肝要ですので、クランクシャフトにガタが出ていない限り、交換はしない方がよいです。

 加工方法としては、ハンドドリルに円筒形の金属用の軸付砥石を装着して、クランクシャフトベアリングを少しづつ回転させながら、クランクシャフトに接触する内面を研磨します。少しづつ研磨しながら、クランクシャフトが手で軽く挿入できるところまで行えは完了です。それほどむずかしいものではありません。

 また、これを意図的な研磨であるとされるのであれば、同型のベアリングの使い込んですり減ったものをかわりに装着すれば、同様の効果があります。


3-2.クランクシャフトベアリングに最初に塗布されているグリスの粘度が高いための回転抵抗

 新品エンジンのクランクシャフトベアリングには、最初、かなり粘度の高いグリスが塗布されています。ベアリングの寿命を考えるとそれで正しいのですが、かなりの回転抵抗によるフリクションロスを伴います。使い込んだエンジンが回る理由のひとつとして、使い込むに従って、このグリスが混合気とエンジンオイルによって溶け出して、回転部分のグリスが少なくなってくることが考えられます。

 対応方法としては、クランクケースを分割した際に、パーツクリーナーで最初についているグリスを完全に洗い流し、かわりに、良質で粘度の低いシリコンスプレーグリスを少量吹き付け、後述のメタルトリートメント系のオイル添加剤をたっぷり吹き付けてスプレーグリスを薄めてやります。
 このベアリングのメンテナンスは、リアシャフトベアリングやクラッチベアリングなどには皆さん行っておられて、その効果を実感されていると思います。

 このような処理は、本来であればベアリングの寿命を縮めることになるのですが、クランクシャフトベアリングは混合気に含まれるエンジンオイルが常に供給されるので、寿命のにはほとんど問題はありません。これもガタがひどくなれば交換すればすみます。


3-3.ピストンリングとシリンダー内面の潤滑と回転抵抗の問題

 ピストンクリアランスというのは、シリンダー内面とピストンリングをつけない状態でのピストンとの隙間のことですが、このクリアランスは少ないほどエンジンの爆発圧力がクランクケースに逃げないのでよいとされています。一般的な市販バイクなどでは、このクリアランスは0.05mm程度、KT100エンジンでは0.03mm程度です。EC04エンジンでは、このクリアランスに結構バラツキがあり、平均すると0.05mm程度になっています。
 しかし、このピストンクリアランスが少ないほど、ピストンリングが強くシリンダーに圧着されて、フリクションロスを生み出します。しかし、クリアランスが大きいと、爆発した混合気が、ピストンリングとシリンダーの隙間からぬけてしい、トルクの低下を招きます。この兼ね合いは、爆発圧力ロスのトルク低下とフリクションロスとのどちらを重視するかによります。また、ピストンリングのバネとしての強さは、エンジンの使用頻度により、焼きなましを繰り返し行われることとなって、弱くなってきます。
 EC04エンジンは、40ccと排気量が小さいので、高回転まで回すことを重視するのであれば、ピストンリングを新品にして、シリンダー内面をホーニング研磨して、ピストンクリアランスを0.07mm程度にしてやると良い結果が出るようです。この数値は、直線が多いかどうかなどのコース特性により、爆発圧力ロスのトルク低下とフリクションロスとのどちらを重視するかで変わります。また、ピストンリングのへたりで徐々に変わってきますので、ノーマルのまま使用して、定期的にシリンダーを開けて、シリンダー表面が鏡面化していた場合、200番程度のサンドペーパーで、交差するように、オイル保持のためのホーニング溝を付けるために軽く削るだけで、通常は、十分です。
 ただし、EC04エンジンのシリンダー内面はフリクション低減とすり減り防止を少なくするための特殊なメッキ加工が施されているため、そのメッキ部分を超えてホーニングをしてしまうと問題が発生しますので注意してください。ホーニングをやりすぎるということは、エンジン寿命を縮めることですので、一度適正なクリアランスが見つかったあとのホーニングは軽くホーニング溝をつけるだけにとどめてください。

 また、この部分、つまり、へこんでいる掃気、排気ポート部分以外のシリンダー内面とピストンリング、ピストンは常に接触して摩滅して、シリンダー内面の状態は変化してゆく部分ですので、ピストンリングとピストンに接触するシリンダー内面の研磨(ホーニング)もレギュレーシヨンには抵触しないと考えることができます。また、これも車検での判別は不可能で、エイジング加工のひとつでメンテナンスの範疇に含まれると考えられます。しかし、この部分は、摩滅が進みやすい部分ですので、やりすぎるとシリンダーの寿命が短くなり交換が必要になりますので、ご注意ください。
 なお、掃気ポート、排気ポートの研磨は、性能に直結しますので、一切の切削加工は禁止されています。この判別は、ポート内が鋳造地肌のザラザラの状態であることを、シリンダーを開けて目視確認することで容易に判別できます。排気ポートについては、カーボンが付着して鋳造地肌は見えませんが、カーボン除去剤でカーボンをとれば判別可能です。特に、メンテナンスの一環としてカーボン除去を行う場合は、決してヤスリで磨いたりせずに、カーボン除去剤とハブラシなどで行なってください。そうしないと誤って鋳造地肌を削ってしまい、車検で失格となりますので注意してください。

 ホーニングは、KT100エンジンなどのオーバーホールでも必ず行われるものですが、クリアランス調整以外にも、シリンダー内面にわざとホーニング溝といわれる細いスリキズをつけて、エンジンオイルの付着をよくして潤滑性を向上させる効果もあります。もしも、ホーニングをずっと行わないままエンジンを使い続けると、ピストンリングとの摩擦によって、シリンダ内面のこのホーニング溝が摩滅して無くなり、所謂、鏡面化した状態になり、オイルのシリンダへの付着性が悪くなり、高回転まで回らなくなります。ホーニングが認められない場合は、シリンダ内面が鏡面化した時点でシリンダの寿命と考え、交換するしかありません。

 上記の理由から、2ストロークレーシングエンジンの場合、一般には、メンテナンスとして、ホーニング加工は必ず行われているものです。

 加工方法としては、一般にディスクブレーキのピストン内面の研磨用の適切なサイズのホーニングツールをハンドドリルに装着して行います。これもKT100エンジンと同じです。クリアランスの測定は、シリンダーゲージか、安くすますのであれば、ピストンリングを外したピストンをシリンダーに入れ、掃気ポート部分から、シックネスゲージをその上に差し込んで測ります。これも道具はたいしたものは必要ではなく、カートショップなら、もちろん、個人でも簡単にできます。摩滅が進みすぎた場合は、200番程度のサンドペーパーで、シリンダー内面をこすり、ホーニング溝だけをつければ大丈夫です。

 以上の3点を改善して、後述のオイル添加剤を塗布してやることで、EC04エンジンは、フライホイールを手で回してみると驚くほど軽く回ります。これで、適切なキャブレターセッティング、点火系の改善とシェル・アドバンスMなどの相性がよいとされているエンジンオイルの使用によって、2016年時点の現行のエンジンも含めて、大抵の場合、軽く12000rpm以上まで走行時のエンジン最高回転数が上がります。

 


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