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キッズカートに使われているEC04エンジンは、クランクケースリードバルブ方式の2ストローク単気筒エンジンです。この形式は、少し以前までは50ccスクーターなどによく使われていた形式で、カートでも、KT100の上位カテゴリーのエンジンにも使われています。しかし、近年、排ガスのクリーン化に不向きな2ストロークエンジンが市販車、2輪レースから姿を消してしまい。今では、過去の技術として、カート関係以外の書籍などではほとんど解説されなくなりました。一般の4ストロークエンジンとは仕組みが大きく違うため、それを理解するためには、古書や古雑誌、カート関係書籍を読まなくてはなりません。ネットでは、検索をすればいくらかの情報は見ることができます。
EC04エンジンのメンテナンスと性能向上方法、レギュレーションの規制の用語や理由などのために、ここでは2ストロークエンジンの簡単に解説しておきます。詳しくは、図版の豊富な解説書を一度読んでおくことをお勧めします。とはいえ、仕組みが分からなくてもカートショップのサポートがあれば高度な専門知識が無くても大丈夫です。ただし、キッズカートを卒業してカデットやその上のクラスにステップアップすれば、2ストロークエンジンの基礎知識は必要になります。メカニックの親御さんだけでなく、ドライバーさんにも知識が必要になり、カートの仕組みを含めて、小学校の高学年からの理科や算数の勉強の応用にもなりますので、できるだけ、理解していただきたいと思います。
まず、ピストンが一番高いところ(上死点といいます)にあるところから、エンジンの回転によりピストンが下がり始めるところから始めます。この時、ピストン上面とシリンダー内面との間で混合気の爆発が起こっていて、その圧力でピストンが押し下げられます。この間、ピストンの上面がシリンダーの横に空いている排気ポートと掃気ポートの上面に達するまでは、爆発圧力がエンジンを回すために使われます。同時に、密閉されているクランクケース内の容積がピストンの下降により減り、クランクケース内にある混合気の圧力が高まります。 次に、ピストンの上端が排気ポートの上端より下まで動くと、爆発して膨張している排気ガスが排気ポートからマフラーへと排出され始めます。ほぼ同時にクランクケース室とつながっている掃気ポートの上面も開き始め、クランクケース内で圧縮されていた混合気がシリンダー内に噴出します。ピストンが一番下(下死点といいます)まで下がり、続いてピストンが上昇し始めて、排気ポートと掃気ポートが閉じるまでの間に、シリンダーの燃焼した排気ガスの排出と未燃焼の混合気の流入が続きます。ピストンが排気ポートと掃気ポートの上に来たところから混合気の圧縮が始まります。この間にはシリンダー内で、燃焼済の排気と未燃焼の混合気が入り混じることになるわけですが、掃気ポートと排気ポートの位置や形状の工夫で、できるだけ燃焼済の排気はすべて排出して、未燃焼の混合気だけをたくさん詰め込むように設計されています。 この掃気と排気が終了するところまでピストンが上がり、掃気ポートと排気ポートがピストン側面で閉じられると、ビストンの上死点までの間に、混合気が圧縮され、同時にクランクケース室の容積が増えることによって、クランクケース内の圧力が大気圧より低くなり、クランクケースについているリードバルブが開いて、混合気をキャブレターから吸い込みます。最後にピストンが上死点まで達すると、シリンダー内の混合気が爆発、膨張を始めてピストンを押し下げるとともに、クランクケース室の容積も少なくなり始めて圧力があがり、リードバルブが閉じて、混合気の吸気が完了します。
ここでは、過去のレーシング2ストロークエンジンの改良や2ストスクーターの改造などで行われていた、2ストロークエンジンのチューンナップ手法を解説しますが、キッズカートのレギュレーションで一切の切削加工と純正部品以外の使用が禁止されていますので、基本的にはすべて違法改造となって失格になります。むしろレギュレーションに則って、やってはいけないことの説明だとお考えください。また、キャブレターのセッティングについては一般論を書くと長くなりすぎるため、EC04付属のキャブレターについてのみ別項で解説いたします。
前述のように、掃気ポートと排気ポートの上部がシリンダーのどの位置に開いているかで、掃気と排気のタイミングが決定されます。これは4ストロークエンジンのバルブとカムの部分の機能にあてはまり、これが低回転の場合と高回転の場合で、要求される開閉タイミングが違うことになってくる訳です。過去市販されていた2輪用2ストロークエンジンなどでは、ここをエンジン回転数によって可変させる機構なども存在していました。
圧縮比というのは、排気ポートが閉まってから、ピストンが上死点に行くまでの間にどれだけの比率で混合気が圧縮されるかという比率です。これがある程度大きいほど出力が向上します。一般的なチューニングでは、上死点まで上がったピストンの上部とその場合のシリンダー内のいわゆる燃焼室容積を小さくすることで行います。方法としては、シリンダーヘッドを研磨して燃焼室容積を下げる方法とピストンの上部形状を膨らませて行う方法があります。これらは、もちろん純正部品のみの使用と切削加工を禁止している通常のレギュレーシヨンに違反します。
どんなエンジンでも、ピストンが上下運動できるようにするために、ピストンの外径は必ずシリンダー内径より小さく作られています。しかし、そのままですと燃焼室で爆発した混合気の圧力で、ピストンとシリンダーの隙間から圧力が逃げて、パワーロスが起こります。そのために、バネの働きのあるピストンリングをピストン上部側面に取り付けてこの隙間を密閉するようになっています。 EC04エンジンの場合には、こういったオーバーサイズのオプションピストンは存在しないため、シリンダー交換以外、対処の方法はないのですが、実は、EC04の場合、低出力でフリクションロスがエンジンの最高回転数に大きく影響するために、ピストンクリアランスが標準規格よのも大きいほうがよい、ということが分かっています。このことは、ピストンクリアランスは小さいほうがよい、というセオリーに反しますが、実際には、レーシングエンジンとしては大きめの、0.08mm程度のピストンクリアランスがあるほうが良い結果がでます。ただし、ここはトルクロスとフリクションロスとのどちらをとるかということであって、これがベスト、という数値はありません。また、EC04はピストンとシリンダーの工作精度がKT100エンジンほど厳密ではないので、新品でも、ピストンクリアランスが異なっています。大体0.05mmからプラスマイナス0.02mmといったところです。 このピストンクリアランスの調整のための研磨、つまり、シリンダー内面のピストンリングとピストンのあたる部分のホーニングは切削加工ではありますが、エンジンを普通に使用するだけで摩滅の進む部分なので、レギュレーションには抵触しないと考えることができます。また、切削加工したとしてもその痕跡を判断する方法がありません。また、ホーニングをせずにそのままエンジンを使い続けると、最初にホーニング加工されていた細いキズ(ホーニング溝といいます)がすり減って無くなってしまう鏡面化現象という状態になり、シリンダー内面のオイル保持能力が低下してエンジンの焼き付きにつながります。そのためにも、ホーニングは必要です。やり方自体はそれほどむずかしいものではなく、計測器具とホーニングツールがあれば、カートショップではもちろん、個人でも作業は可能です。 また、この圧縮圧力の保持とフリクションロス低減について、バネであるピストンリングが熱と摩擦によって結構ヘタりますので、こまめな交換が効果があります。
これも一般的なセオリーですが、点火火花を強力にすることと、高回転むけに点火時期を早くするというものがあります。 次に点火時期の調整ですが、回転がごく低い場合、プラグの点火のタイミングはピストンが上死点に達した時なのですが、エンジン回転数が上がってくると、プラグの火花で混合気が燃焼をはじめても、すべての混合気が燃える前に、ピストンが上死点をすぎて下がってしまうため、最大の出力が引き出せません。このため、プラグの点火タイミングをピストンが上死点にくる前にして、上死点の時点で混合気がすべて燃焼を始めているように調整します。これを点火時期の進角といいます。着火によるに火炎伝播速度は一定であるため、最適の進角はエンジンの回転数で変化します。これを高回転より、つまり早いタイミングでプラグに点火するように変更する訳です。この機構は、市販エンジンなどでは、自動で最適に可変するように電子制御されていますし、KT100エンジンでは、調整機構がついています。 もし、レギュレーションが許せば、この点の唯一の改善方法としては、プラグの変更とプラグギャップを広げることがあります。CDIの種類の違いは、BPM8Yをプラグギャップ0.8mmから1.2mm程度に広げることで解消されることが検証でわかっています。
エンジンは、金属がオイルを介して接触する部分があり、その摩擦抵抗にパワーが食われてしまいます。これをフリクションロスといいます。フリクションロスは完全になくすことは不可能ですが、エンジンオイルの選定やガソリンとの混合比の変更、オイル添加剤の塗布によって摩擦抵抗を減らしたり、接触する金属部分、EC04エンジンの場合は、クランクシャフトベアリングとピストンリングとシリンダー内面、クランクシャフトとオイルシール内面になりますが、長期間使い続けたり、場合によっては、この部分を削り、クリアランスを適正にしてやることで、新品状態よりかなり大幅にフリクションロスが低減できます。フリクションロス低減によりエンジンパワーの減少を防ぎ、より高回転までエンジンを回すことができるようになります。
EC04やKT100SECなどに使われている自動遠心クラッチの動作原理は、クランクシャフトの回転上昇に伴って、スプリングで縮められていたクラッチシューが遠心力でスプリングの力に勝って広がり、ドラムクラッチの内面に接触して動力を伝える、というものです。この仕組みで、アイドリングではクラッチが切れて、エンジン回転上昇とともに、クラッチシューが滑りながらクラッチドラム内面に接触して、いわゆる半クラッチ状態を経て、完全にクラッチがつながって動力がロスなく伝達される訳です。 また、EC04やKT100SECなどの乾式といわれる方式以外に、クラッチシューの表面を滑らかな鉄製のものにしてクラッチドラムを密閉し、その中にオイルを適量注入して摩擦を調整する湿式クラッチという方式もあります。これは、KT100SEC以前にあったヤマハのKT100SCやKT100Jといったエンジンに長く使われていました。湿式クラッチの場合は、半クラッチと完全接続するエンジン回転数の調整には、注入するオイルの量と質の調整とクラッチシューの重さの変更による方法がとられてきました。
2ストロークエンジンのマフラーは、出力増強のために一般に滑らかな膨張室形状をもったチャンバーと言われる形をしています。チャンバー効果というのは、排気を強力に吸い出すことと、先がすぼまった部分で排気の圧力波の反射を利用して排気されようとする未燃焼の混合気を燃焼室に押し戻して、充填効率を高めてより多くの混合気を燃焼させようという構造です。詳しくは、書籍やネットで「チャンバー効果」でお調べください。 EC04の場合は、現行の角形マフラーもそのような構造に近い形状にはなってはいますが、大きさの関係で大したチャンバー効果はなく、あったとしても20000rpm以上での作動回転数になるはずであり、マフラーも純正品しか使えないので、一般的な2ストロークエンジンのチューニングの定番であるチャンバー装着としう手法は使えません。 2-2-8.リードバルブの形状変更と強化 クランクケースリードバルブ形式の2ストロークエンジンのチューニングのひとつとして、強化リードバルブの装着という手法があります。これは、板バネとして吸気を弁として制御しているクランクケースリードバルブを、より強いバネ定数を持たせるために、厚みを増したり、樹脂製やカーボン製のものに交換するというものです。そうすることで、低回転の時の吸気抵抗は増大しますが、より高回転域でバルブが効果的に働き、混合気の吹き返しを減らして高回転でパワーを出すことが可能になります。 EC04では、最高回転数の上限が、純正品の板バネとしてはかなり柔らかいリードバルブで、大体決まってしまうところがあります。また、リードバルブアッセンブリも純正品を一切加工せずに使用しないといけませんので、この強化リードバルブという手法は使えません。詳しくは後述いたします。 2-3.レギュレーションで違反となる事例と車検での確認方法 1.排気ポート、掃気ポート部分の研磨 シリンダーを開けて目視確認します。必要があれば、排気ポートについては、カーボン除去剤によりカーボンを除去して切削加工の痕跡がないか確認します。 2.その他、レギュレーションで許容されている部分以外のすべての切削加工 エンジンをすべて分解し、目視または計測確認を行います。これは必要に応じて、車検長の判断でどこまで分解するかは決定されます。 3.CDIのフライホイールの取り付け用のボルト穴の切削加工による点火時期の変更 CDIを取り外し、目視または計測確認を行います。 4.フライホイール側のクランクシャフトのキーの取り外しによる点火時期の変更 フライホイール側のボルトを外して目視確認します。または、フライホイールを取り外して確認します。点火時期が変更されていなくてもキーがついていなければ失格になります。 5.使用を禁止されている純正部品の使用、および純正部品以外の部品の使用 確認対象によって必要なエンジンの分解を行い、目視または計測確認を行います。これは必要に応じて、車検長の判断でどこまで分解するかは決定されます。使用が禁止されている純正部品の例としては、「3」の刻印のあるシリンダーや角形以外のマフラー、金色をしたリードバルブなど、各レースのレギュレーションに指定されているものです。 6.リードバルブアッセンブリの部品の純正品以外の使用とすべての切削加工 リードバルブアッセンブリを取り外して目視またはリードバルブの厚みを計測して確認します。 7.クラッチ部分へのグリス類、オイル類、添加剤等の塗布 クラッチドラムを外して目視、手での触接で確認します。 8.キャブレターの使用部品と調整が指定されている場合は、メインジェットの変更、ジェットニードル位置の変更、一切の切削加工。 キャブレターを分解し、目視または計測確認を行います。 9.点火プラグとプラグギャップがレギュレーションで規定されている場合、指定以外のプラグの使用とプラグギャップの変更。 点火プラグを外して、プラグギャップがレギュレーションで規定されている範囲内かどうかを計測確認します。 10.プラグキャップの純正部品以外への変更 目視確認を行います。
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